しばらく呆然としてからリビングに向かえば、東と西がぱたぱたと出迎えてくれた。


「おはようございます、メイさん」

「お、おはようです」


「こちらにお座りください」


東が丁寧な言葉で案内してくれ、お茶碗の白米や漬物、お味噌汁、野菜炒めを並べてくれる。

和食なんて久しぶりなメイは、思わず目が輝いた。

「い、いつも和食なんですか?」

「いいえ、今日は西が和食がいいと言ったので……お気に召しませんでしたか?」

「え?と、東ちゃんが作ってるんですか!?」

「?私と西ですが……?」


さも当然と言った様子で言う幼女。

瑠璃と違って機械的な彼女だから、なんだか恐ろしい。


《子供扱いしないで!お姉ちゃんはお料理上手なの!たべてみて》


そう書かれたホワイトボードが目の前に踊る。

西が手書きで書いたものを笑顔で指さしていた。

(……やっぱり彼女…)


声が出せないのか。

昨日から一切しゃべらないから、おかしいなとは思っていた。

メイはあまり突っ込んではいけないだろうと、笑顔で返した。


「わかったです!西ちゃんはお姉さんが大好きなんですね〜!」


なでなでと頭を撫でれば、簡単に身を預けた。子供扱いするなと言った口はどれだろう。


コト、と麦茶を置いた東。

瑠璃たちはもうさきに食べてしまったのだろうか。

(お寝坊さんしちゃったですね)

昨日はずいぶん色々なことがあって、つかれたからなと反省。

「いただきますです!」

「どうぞ」


素っ気なく返され、すこしだけ傷つくメイだった。

と。



「うわぁああんっ、行きたくないよう」


「……馬鹿か」


「瑠璃と離れたくないよぉお」


叫んだのは彼女の兄だった。


パーカー姿になぜかサングラスをかけて。嫌だ行きたくないと駄々をこねている。