作業なんてする気にもなれなかった。
電話の前にずっと座って、食事もとらずに完全にやつれていた。
意気消沈。
メイが自分から逃げた、その事実がたまらなく嫌だった。
野崎はそんな彼を見ていられず、とりあえず警察に協力をしていた。
どんな性格でどんな背格好でもちものは一一。
ひとつでも多く特徴を教えようと必死だった。
学校に通っていない事実に首をかしげた警察だが、海外の人の思考はわからないと放置された。
「社長、ご飯食べましたか?」
お昼すぎに野崎が部屋を訪れれば、電話の前で窓を眺めていた。
二時間前に来たときと動いていないように見える。
そんなわけないと頭を振り、もう一度声をかけた。
「社長!」
「聞こえてるよ、野崎」
低くて落ち着いた、けれどちいさすぎる声。



