「……メイちゃんは写真、撮らないの」
「写真なんて、撮った思い出すらないです」
彼は極端にメイが形として残ることを恐れた。
どのルートでバレるかわからないから、と写真もとらなかった。
「誕生日だって、思い出せない。学校にだって行ってない。お友達だって、2人しかいないんです。家族だってもういなくなった」
ぽたり、とパジャマに涙が落ちる。
ぎょっとして瑠璃が顔を上げれば、メイは幼さのにじむ泣き方で、嗚咽を漏らす。
「メイには……何が、あるんでしょうか…っ……ご主人様もお兄ちゃんもいなくなったメイは、本当にからっぽです……」
「メイちゃん、」
「普通になりたかった、普通に生きたかった……メイは、どうして、こんな」
普通になりたかった、と泣きはらす少女。
運命だろうか、偶然とはとても思えない一一そう思い、瑠璃は手を伸ばす。
常任離れした美しい白い腕で、メイをそっと抱きしめた。
「……メイちゃん、私だってふつうになりたいよ」



