それからお風呂に入り、来客用だというさっき敷いていた布団に寝た。
瑠璃の部屋は自分の部屋とは全然違う、狭くても生活感漂う部屋だった。
好きなのか猫のキャラクターのぬいぐるみ、使い込まれた黒い机、コルクボードに貼られた友達との写真。
女の子の部屋、と表現するのにふさわしいものだった。
写真といえば、リビングに遺影のようなものが置いてあった。
白髪の女性、あれは彼女の母親だろうか。
「……?」
物珍しそうに部屋を見つめるメイを不思議そうに見つめてから、瑠璃はメイの隣に布団を敷いた。
「…なあに、珍しいの」
とくに写真を見つめていたメイを気遣って、コルクボードを外して持ってきた。
「あ、ありがとうです」
「……これ、友達が誕生日にくれたの」
そう言われて見てみれば、なるほど“HAPPY BIRTHDAY!”などと書いてある。
みんなででかけたときの写真や、遠足などの写真。充実してそうな生活。
楽しそうなその空間は、経験したことのないものだった。
それはまさしく、“ふつうの生活”だった。
いくらメイが今更望んでも、決して取り戻せない普通。



