「一一うそだろ……ああ、だから聞いたことあったんだ」
「……どうかした?」
瑠璃がパソコン画面を覗いて、彼女もぎょっとした顔をする。
「……これ、知ってる。……話題になってた」
「ああ、有名だよなこの事件」
「あの……?どうしたですか?」
「……」
にがむしをかみ潰したようなかおで、歌月は丁寧に教えてくれた。
「…メイちゃんのいたころはどうだったかわからないけど、この施設……虐待とか放置とか違法とか、いけないことたくさんしてたらしいんだよね。
それで警察が踏み込んで、今は壊されてるらしい。当時いた子供たちは別々のところに引き取られたって書いてあるよ」
壊された。
その事実に呆然として、声が出なかった。
「当時この事件ずいぶん話題になったんだ。色々法改正とかされたくらい影響があって……大丈夫?メイちゃん」
「…お兄ちゃんたちは、もういないの……?」
ぽろぽろと、目から涙がしきりにあふれる。
ぎょっとしたふたりは慌ててメイのフォローに務める。
「メイちゃん、引き取られただけだから! どこかにかならずいるから、ね?」
「……そう、そうだよ」
優しくそう言われるが、メイにとっては絶望的だった。
じゃあ、これからどうすればいいのだ。
目標を見失ってしまった。
お兄ちゃんに会うという目的は果たせなくなった。



