「ところで……あー」
困ったように視線を泳がして。
歌月は頭をかきながら問うた。
「メイちゃんはその、家出…なのかな?」
「違うです!えと、もといた場所に帰るだけです」
かつて、自分の居場所は兄の横であった。
そこに戻るための、いわば旅なのだ。
「そうなんだ、へえ」
どう見ても家出にしか見えないんだけど、と納得するふりをしながら視線を泳がした。
「……元いた場所?」
足を拭き終わったので片付けながら(メイはお礼を言いながら)瑠璃が聞いてきた。
やけに声の小さい静かな子だ。
「メイ、お兄ちゃんがいるんです。えと、血は繋がってないんだけど、ずっとお兄ちゃんみたいに思って暮らしてきた人が」
「…私、も。お兄ちゃんいる」
無表情で手を挙げた。
「いま向こうにいる」
しかもここにいた。
「そうなんですね!近くにいるんだ…いいなぁ」
ふと目を落として。
「メイ、離れ離れになっちゃったんです」
「……」
泣きそうな顔に、胸が締め付けられた。
幼い口調だから余計にだろうか。
「…施設にいたんですが、大旦那様に引き取られて。
今は違うご主人さまのとこにいたんですが、どうしてもお兄ちゃんのところに行きたくて」
「…恋しくなったの?」
「いえ。…行くところがなくなったんです」
「それは、そのご主人さま…?とやらに捨てられたってこと?」
歌月が食いついて聞けば、ゆるゆると首を振った。



