「ご主人さまっ!助けてっ……いやぁああっ」
いつから、彼になったんだろう。
むかしは兄に助けを求めていたのに、いつから。
彼に助けられたかった。
泣いているときに隣にいるのは、彼が良かった。
目を瞑って、力を込めて振り払おうと一一。
「…なにしてるんだ?」
ギラリとした、低い声が響いた。
「あ?んだよお前」
「いや、だって嫌がる女の子捕まえてたら助けるだろ、普通」
パシ、とメイを掴んでいた腕を掴み、引き剥がす。
抵抗していたみたいだったが、呆気なかった。
真っ暗のTシャツに身を包んだその人は、男の人だった。
暗闇であまり良く見えないが、若い気がする。
そして掴んだ手をそのまま自分に引き寄せ、後ろに投げた。
俗に言う背負い投げ。
勢いよく地面に衝突し、相手もメイも呆然とする。
投げられた方は痛さで悶えていた。
「…重」
ぼそっと誰も聞いてないのに感想をいう。
「てめっ!何してんだっ」
わかりやすい切れ方をした片方をひゅんと交わし、勢いよく殴った。
それはもう、容赦なく。
相手が後ろによろめく強さだった。



