「……よしっ」
目的も決まった、居場所も決めた。
お気に入りの服を何着か、それと隠し持っていたお菓子をいくつか。タオルも忘れずに詰め込んだ。
お金が全くないことに気づいた。
高そうな本を何冊か持っていく。それをお金に変えようと思った。
ほかにお金になりそうなものは持っていなかった。
靴がないことに気づくが、裸足でも大丈夫だろうと自己解決。
忘れちゃいけない、と初めてのお友達からもらったリボンも抱き抱えた。
いろいろと計画が甘いが、なんとかなるだろうと舐めきった考えで家出を決行した。
最後に。
長年お世話になった大好きな彼に、伝えておくべきだろう。
紙とペンを手に取り、思案する。
何を伝えればいい、どうすればいい。
言いたいことは山ほどあった。
小言がとても多かった。早く寝ないと怒られた。朝起きないと怒られた。勉強を教えてくれた。個性を愛してくれた。笑ってくれた。名前を呼んでくれた。こんな汚い自分を抱きしめてくれた。
「……っ」
また、涙が出てきた。
紙を濡らしたので急いで拭う。
そして、精いっぱいペンを走らせ、勢いのまま窓から身を乗り出した。
玄関から出ていってはバレてしまうからだ。
裸足のまま降り立った地面は、メイが想像していたより硬かった。
「……ごめんなさい、ご主人さま」
そっと呟いて、メイは庭から抜け出した。
午後4時、彼女の家出が始まった。



