「ご主人さま喜ぶかなぁ…」
ほくほくとした顔で、想像する。
女の子特有のとてもかわいらしい一面に、高遠はほっとした。
拒絶されたばかりだから、内心焦っていたのだ。
「ついでにコーヒーも淹れられたらいかがでしょうか」
突如冷ややかな声が降ってきたので振り向けば、漆黒のスーツに身を包んだ女性。
「野崎さんだっ」
わーいと抱きつかれ、それを優しく受け止める。
「おかえりなさいです」
「いえ、それが荷物を取りに来ただけなんです。すぐにまた会社に戻ります」
「そう…なんですか」
シュンとしたメイに慌てて、野崎は付け加える。
「も、 もちろんマフィンを頂いてから」
「わあ!ありがとうございますです!」
抱きついて喜ぶメイの頭を愛しそうになで、そしてはたと気づいたように。
「ああそう、コーヒーはどうします?」
「うーん…野崎さんの方が上手だし」
「教えますよ、淹れ方ぐらい。練習です」
将来役に立つかもしれないと考えたメイはお願いしますと頭を下げた。
ただ単に学びたがっているメイに親切心で出した提案だったが、思いのほか筋が良かった。
昨日今日始めたばかりのメイでは野崎にかなわないが、それでも充分飲める味だった。
丁寧に持っていってこっそり渡し、野崎はほくそ笑んだ。
飲み終えたら、あなたは今メイ成分を摂取したのだとドヤ顔をし粋な計らいに感謝してもらおうと思っていたのだ。
しかし、事態はそんな生易しいことでは済まなくなる。



