◇◇◇
高遠は驚いた。
自室で言いつけられた勉強だけをしてきた彼女が、急に屋敷内をうろつき回るようになったのだ。
洗濯や洗い物を一緒になってやり、ときには料理も手伝おうとした。
最初は驚いていた使用人たちだったが、最奥の姫が積極的なのが微笑ましくなったのか、協力してくれるようになった。
しかし人見知りなメイはどぎまぎしていて、一番頼ったのは高遠だった。
自立のため、と始めた家事だったが、思いのほか楽しかった。
否、彼のことを考える暇がなくなったのだ。
勉強より体を使うものの方が考えるすきを作らなくて済む。
「そうそう、そこまで行ったらオーブンに入れますよ」
「んしょ……」
「あ、重いでしょう、私が持ちます!」
今日は高遠とコックにマフィンの作り方を教わっていた。
お菓子作りは初めてだったが、二人のおかげでなんとか焼くところまでできた。
あとは膨らむのを祈るばかりだ。



