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話に聞いていたより、メイはずっと明るかった。
リルはそのことに安心しつつも、人間はいくらでも自分を偽れることを知っていたため、決して信用しなかった。
この明るさがメイの感情の全てではない。
裏では傷ついて泣いているのだと、きちんと心得ていた。
だから、あえて聞かなかった。
もとよりルコーラを尋問済みだったので事件の全容は把握している。
人の嫌な記憶を弄るより、今後の話をした方がいいと思った。
野崎とルイが気をきかせて退室し、3人きりになる。
チャンスだと思った。
だから、踏み込むつもりだった。
「メイちゃん」
「はい」
「メイちゃんを傷つけた人は、ティンがこらしめてくれました。これから国に連れて帰って、裁きます」
「捌く……?」
「お魚の方じゃないですよ?」
きょとんとしたメイは、意味を理解して。
「裁くって…裁判にかけるってことですか?その、メイを……あの…」
「ごめんなさい。メイちゃんのことで裁いてやりたいのは山々なんですが、元より彼は重罪人でして。ほかの事件で裁くことになります」
シャリルの暗殺、リルの暗殺未遂。
この二つで極刑なのは間違いないので、スムーズに裁くためにもリルは強姦のことは言わないつもりでいた。
裁いてやりたかった。
けれど、極刑の上の極刑はない。



