「何も思わないんですか?」
「兄上が心配だ。父上はたぶんリル様のお姉様と手を組んでいただろうし、関係が露呈したら婿である兄上もただでは……」
「お兄様ではなく、お父様のことです!」
メイがいるのを忘れて、少し大きめに言ってしまった。
死刑だ、と表情を変えずに話すルイに怒りが湧いたのだ。
「……野崎、メイが…」
「あ…」
もぞもぞとメイが瞼を擦り、ゆっくりと目を開けた。
ここぞとばかりにルイが視界に侵入する。
「メイ、おはよう。ただいま」
「……あ…ぅ……ご、ご主人様」
メイはルイを確認した途端、野崎の体に顔を押し付けてしまった。
一気に絶望色に染まるルイに、笑いそうになる。
「野崎さん……」
「…よしよし、大丈夫ですよー」
甘えてくるメイに、慣れてない感丸出しであやす野崎。
ルイの怒りゲージがうなぎ上りだったが、あんな事件のあとなのだ。仕方ないと思い直した。
脳内に浮かぶは、父のこと。
許す気など毛頭ない、だが。
だが、このまま別れていいのだろうか。



