◇◇◇
帰宅すると、メイが野崎にベッタリだった。
どのくらいベッタリかというと、体をすべてくっつけるくらいだった。
「……野崎ぃ……」
「睨まないでください、本人が望んだんだから合意の上です」
天蓋付きのベッドの中、野崎を全身で抱きしめて離さまいとするメイ。
ぐっすりと心地よさそうに眠るメイに反して、心なしか野崎は窮屈そうだ。
「…なんでそんなに仲良くなってるんだ……」
「……さあ、私もなぜ懐かれてるのか分からないところですが、悪い気はしません」
なでなでと頭をなでた。
まるで親子だな、と言いそうになったが、慌てて飲み込む。
さすがの野崎もそれは怒るだろう。
年増に見られて喜ぶ女はいない。
「流石にこれでは身動きが取れないので、今晩はここに泊まらせて頂きます」
「ああ……というか、あの状態では家に帰れないだろう」
野崎の部屋はぐちゃぐちゃになっていた。
この時間帯に帰っても片付けで眠れないことになるのは目に見えていた。
「悪かったな、部屋。壊れたものは弁償しよう」
「甘えさせていただきます」
素直に応じた、遠慮もへったくれもなかった。
「ところで、お父様はどうでした?」
「父上か」
ふう、とため息をつく。
「……彼は、ティンに捕まっていて、明後日にでも国に強制送還されるらしい」
「明後日……早いですね」
「ああ、リル様も一緒だ」
「まあこの国にいる理由がありませんしね」
リルは、ルコーラの暗殺から逃げてきた。
そのルコーラが捕らえられた今、日本にとどまる理由はない。



