「……」
ルコーラは頭を下げた息子を見て、呆然としていた。
ルイは本当にメイが好きなのだ。
エルナリーゼ云々ではなく、メイ自身が。
「……そうか、私はお前から奪うことしかしてないな」
母親といい、兄といい、メイといい。
ルコーラは欲しいものは何でも手に入れてきた。
逆に、ルイはすべてを奪われてきた。
だからこそ、奪われたものの気持ちが良くわかる優しい子供に育った。
「………」
今更、だと思ったが。
けれどようやく、ルコーラは息子に対して罪悪感を持てた。
一一子供なんて、妻の付属品だと思ってきた。
妻であるエルナリーゼは愛してたが、子供はどうも愛せなかった。
だけど生まれたものは仕方ない、養う義務がある、と、育ててはきた。
とくに、ルイはエルナリーゼの容姿を受け継がなったから、興味を持てなかった。
そのうち子供を使って欲しいものを得ることを思いつき、興味を持った。
兄はエルナリーゼの髪色を受け継いだ笑顔の優しい男に、ルイは能面だが頭の切れる男になっていた。
二人は仲が良かったようだが、そんなのに興味はない。
使えるか否かだ。
兄は将来安泰であろう第一王位継承者のもとへ婿に行かせたが、ルイは放っておいた。
利用価値を見いだせなかったのと、手間をかけたくなかったからだ。
そのうち彼は勝手に会社の事に首を突っ込んできて、日本に行きたいというので会社を任せて行かせた。
ただ、それだけだった。
だから全然考えたことがなかった。息子の気持ちなど。
そこまでメイを愛してたなんて、考えもしなかった。



