「そもそも女はものじゃない!
そんなんだから、母も振り向かなかったんじゃないんですか!?」
「……っ、」
「権力を使って無理やりなんて、始まりからしてひどいのに、加えてモノのように扱われる毎日では、王女の元に戻るに決まってる!」
女心いぜんに、人としてどうなのかと、ルイはずっと思っていた。
父親が母親に自分の望むような女を強要し、裏切りを重ねた結果、母親は子供である自分たちを捨てて逃げた。
兄弟の間に恨みはなかった。
逃げた方がずっといいと思っていた。
まだ幼かった彼らは、母親を失った悲しみよりも原因となる父親の恨みの方が大きかった。
母親への哀れみもあった。
だからこそ、メイを見た時。
兄弟は助けたいと思った。
彼女がまた母親の二の舞になるのは、火を見るより明らか。
自ら生命を絶つものを増やすのは、もうこりごりだった。
「…お願いです、僕からもう奪わないでください」
“メイは僕のすべてだ”
野崎に言った言葉は、真実だった。
奪われたが最後、ルイはルイではなくなる。
母親のときはまだ許せた。けど、メイは許せない。
理由は単純、すべてだからである。



