ご主人様に監禁されて



「しかし……どうしてこうもうまく行かないのだろう」


自嘲するような笑みに変わる。

驚いていると、彼は目を閉じた。


「エルにつづいてあいつすら、私のものにはならなかった。最初から最後まで私のものだったことなんてない」

「え?」

「一一エルはいつまでもシャリル王女のことを考えていたし、あれも拾った当初は兄のことしか考えていなかった」

「……」

ルイには操り人形にしか見えなかったのだが。

兄のことしか考えてなかったのか。


「当然でしょう」


手の手当を終えたリルが口を挟んだ。

「人は最悪の環境の時、幸せだった時を思い出して、忘れないようにする。
あなたに愛されない生活より、お兄さんと愛されて過ごした日々の方がずっと幸せだったのでしょう」

「私はエルを愛してる……!」

「メイちゃんは?」

止めるティンを振り払ってルコーラの前まで歩み寄る。

「国崎メイを愛してるのかって聞いてるのです。……少なくとも私やティンやルイさんはメイちゃん自身を愛してますよ」

メイを知ってるかのような物言いにルイは驚いた。

愛してるとまで言うなんて。

しかし、そのとおりだと思った。


ルイはメイ自身を愛してるし、いつまでも幻影を追ってる父とは違う。


「リル様の言う通りです。僕はメイ自身を愛してますし、だからいつも彼女の意にそう自分でありたい」

押し付けてエルナリーゼという型に嵌める父親とは違うのだ。

「……ふん、くだらない」

それをルコーラは鼻で笑った。


「女とは常に男のものであるべきだ。使われることが愛で、女側もそれを望むはず」


「ふざけないでくださいっ、私は男性に使われたいと思ったことはありませんわ!」


あなたはどこの関白ですか!と怒りながら。


「使われたいと思うのは、その人のためなら何でもするということ。愛がなければ成り立ちませんもの」


「……リル様はやはりお若い、まだ何もわかってらっしゃらない。世の常とはそんなものです」


若いと言われ、たじろぐ。


若くても世は見てるつもりだ。
けれど、それをなんて言えばいいのかわからない。

ティンはハラハラしてるだけだし使い物にならない。

どうまくしたてようか算段をつけていたときだった。




「わ、かってないのは父上の方だ!」


息子が牙を向いた。