◇◇◇
タクシーを飛ばしてホテルにルイがついたとき、リルは手のひらの治療を受けていた。
ソファに座って、くるくると包帯を巻かれていた。
「あらこんばんわ」
「リル様っ!表の護衛が……」
「ああ、倒れてたみたいですね」
「スタンガンでバチバチしただけみてーだから、死んではないです」
平然とそういうティンに、そういう問題ではないと思った。
それだけの危険があって、リルは手を怪我した程度、ティンに至っては無傷。
「……」
何故か灰皿がひっくり返って床の上に飛んでいて、血の後もわずかだがある。
そして父の姿を発見した。
「一一っ」
彼は激昂して、怒鳴り散らそうとした。
しかしルコーラはすでに額から血を流している。
殴る蹴るはなしだ。
「父上」
「ルイか」
「メイは救出しました」
「救出?拉致というのではないのかね」
もともとは自分のものだと、そういう彼に怒りが膨れた。
「……父上」
「なんだ」
「一一メイを返してください」
「……」
その返せの意味。
手元には戻ったのだから、どういうことか聞こうとして、やめた。
「言っただろう、エルは私のものだと」
「捨てたでしょう」
「また拾っただけのこと」
ルコーラはそう言って、笑った。
リルが噛み付こうとしてティンにとめられる。



