「……とまあ、あなたの疑問は解決したことでしょうし、私の質問コーナーと行きますね」
ばんっと手を叩いて、話を切り替える。
「あなたは私の母シャリルを殺しましたね?」
「何のことでしょうか?」
「とぼけるのは想定済みです。ほうれ」
ぷらぷらと白い紙をぶらさげて、彼の顔に近づける。
封筒だ。
封は切られていて、でも切符も住所も書いていない、真っ白の。
「なんでしょうか」
「エルナリーゼ・ヒューアスの遺書です」
「一一っ!」
今まで涼しい顔をしていたルコーラの顔が、豹変する。
「な…!い、遺書!?初めて聞いたぞ!」
「体面はあなたの妻ではあっても、心はお母様のもの、とでも言いましょうか。事実、この遺書の宛先はお母様です」
ペラりと裏返せば“シャリル・ドリュール王女へ”と書いてあった。
彼女の自殺はシャリルの死後だ。
シャリルを守れず、また殺したのが自分の旦那という負い目から死んだ。
それでも宛先をシャリルにしたのだから、相当だ。
「……っ、なんなんだ、あの王女は……!」
「私のお母様を僻む気持ちはわかります、娘の私もたまに嫉妬してしまいますもん」
そういいながら、かさかさと封筒から紙を取り出す。
そして、ルコーラに見せびらかすように。
「これ、あなたの会社の裏帳簿のコピーらしいじゃあないですか」
目を見開く。
そして目を凝らしてみれば、以前自分が作成した覚えのある表が目に入った。
エルナリーゼは、証拠にと裏帳簿を同封していたのだ。
「この裏帳簿、おかしいですよねえー?使い先がわからないお金がたくさんある。表はあんなに綺麗なのに。何に使ったんですか?」
「……」
「ちょうど、暗殺者が4人くらい雇えますね」
「……っ」
「そういえば先程の男の人たちに支払った額はいくらなんですか?確認してみましょうか?連絡先くらい登録しているでしょう?」
「……あなたは……!」
だから、生かしておいた。
大事な大事な証人は死なれては困る。



