「怒りに我を忘れてる場合じゃありませんでした。あなたに聞きたいことが何個もあるんです」
「奇遇ですねリル様、私もです」
額から垂れ流した血を拭うことも出来ない彼は、そう笑った。
心底嫌そうな顔をしたが、なんですか?と低音で聞く。
「リル様はエルナリーゼとお知り合いで?」
「遠い思い出ですが」
「いえ、そうではなくて」
どのエルナリーゼを指すかわかったとたん、また嫌そうな顔をした。
「……申し訳ありません、私には国崎メイというお友達はおりますが、エルナリーゼという名の友達はいません」
怒りを抑えながら、彼女は冷静を保った。
しかし彼は踏み込んでくる。
「…リル様、あの子は」
「黙ってください。じゃないと首を飛ばします」
ちらりとティンを見やれば、ルコーラが肩を強ばらせる。
「あの子は私のお友達です。
…ようやくいろんな世界に興味が出てきて、野崎さんとも仲良くなったと嬉しそうに言っていたというのに」
監禁生活から世界へと。
ようやくあの子の歴史は始まろうとしてたのに。
「引きこもるようにでもなったら、どうしてくれるんです…!」
拳を握りしめて、彼女は叫ぶように言った。
…泣き声が響いてるという。
ルイはどうしたらいいのかわからないといっていた。
狂ってしまった。
すべてが、この男のせいで。



