「……なんてこと……」


なんてことだ、このタイミングでか。


いや、このタイミングだからか。


メイは一番辛い状況だからこそ、ルイが好きだと気づいた。



そしてその気づいたことを忘れたくないと、記憶を消せないままでいる。


「……」

好きでもない男に抱かれたあと、好きな人に会うのは心苦しいだろう。

それはすごく理解できる。

しばらく一緒にいてやることは全然構わない、むしろそうして、支えてやりたい。


しかし、ルイを好きだという件はどうするべきか。


さきほどルイの覚悟を聞いたばかりだ、一概に両思いだと浮かれることはできない。

“…察してください”

そう言った彼は、とても切ない顔をしていた。

いままで妹だからと引いてきた感情が、メイが自分のことを好きだと知ったらどうなるか検討がつかない。


ルイの性格から言って、諸手を上げて喜ぶことはまずない。


きっと、妹とこれ以上恋仲にならないように、そっと身を引くだろう。

もしかしたらメイを置いてカサンデュールにでも帰るかもしれない。

そうしたら残されたメイは、きっと捨てられたと絶望する一一


「野崎さん?野崎さんっ」


「あ、ご、ごめんなさい……」

うっかり考え込んでしまった。

メイが心配そうな顔をしている。

いけない、とかぶりをふった。