金木犀のアリア

 何故、「Beatlesの『Let It Be』」なのか──。




詩月は歌詞を思い浮かべ、意味を考える。




繰り返される「Let it be.」の和訳は「あるがままに」。




繰り返されるごと説得力を増し、心の奥底に浸透していく。




「Let it be.」あるがままに。




詩月はホッとし胸を撫で下ろす。




胸の奥が熱くなり小さく笑みが漏れた。




「大した余裕だな」



ポツリ、誰かが呟く。




詩月はそう見えるならば、それでいいと思う。




「Let it be.」あるがままに、ありのままに。




詩月は「平常心、いつもどおりに弾けばよい」腹を決めた。



 「お前は『周桜Jr,』ではない。お前は、『周桜詩月だ』」。