「詩月……。話すことはないか?」



「……」



「難なく弾いているつもりだろうが、誤魔化せていると思っていたか?」



「……」



「痛みはいつからだ!?」



いつになく、声のトーンを落とし柔らかい声のヴァイオリンの師匠。



詩月は、師匠のいつもは鉄面皮のような顔が穏やかなのに気付く。



「詩月、君は君の母親を見ていて知ってるだろう!?

無理をすると、どうなるのかを」



言いながら、師匠は胸ポケットのボールペンをとりメモ用紙に走り書きをする。


「ここを訪ねてみろ。専門医だ」



詩月は手渡されたメモに目を落とし、不安にかられ震える指を握りしめた。