と、思っていたら。


彼女、ロッカーの奥の鏡を見ながら、とつぜん髪を結い始めた。


もちろん扉は全開のまま。


はあ・・・。そうきたか。


後ろで待ってるあたしの気配に、気付いてないはずないんだけど。


一応、あたしは声をかけた。


「大森さん」

「・・・・・・・・・・・・」

「大森さん」

「・・・・・・・・・・・・」


無視。

きれいに、見事に、スルー。


大森さんは振り向きもせずに、髪を結い続けている。


・・・・・・後ろに立って、背後霊みたいに鏡に映り込んでやろうかな。


それでもそのまま、彼女が髪を結い終わるのを、あたしは静かに待っていた。


トラブルは嫌だもん。


それに、逆らえば余計に逆上するタイプよ。この人ぜったい。


火に油をそそいだりしたら、一気に大火災になっちゃう。


やっと彼女が髪を結い終え、ホッと安心したのもつかの間・・・・・・


今度は大森さん、メイクまでし始めちゃいました。


おいおいおい。

ちょっとロコツ過ぎやしませんか?


さすがにあたしは、あきれてしまった。