赤い頬で自転車をこぎ続け、あたしは目的地に到着。


そして大樹に話しかける。


着いたよ、大樹。

大樹のマンションに。


自転車置き場に自転車を置いて、マンションの中に入る。


そしてまっすぐ中庭へ向かった。


いつもの場所。


大樹とあたしが結婚した、あの中庭へ。


あの後しばらくして、この中庭は出入り自由になった。


それから毎日、あたしはこの中庭へ足を運んでいる。


緑の芝生。花壇の花。


誓いの言葉の、小さな人工池。


大樹が乗って、あたしに誓いのキスをしてくれた白いベンチ。


全部あの頃と同じ。ここは何も変わらない。


あたしはベンチに腰かける。


そして、ゆっくりと目をつぶった。


あの頃と同じように。


祐輔の部屋で、大樹とふたり、寄り添い合っていた頃のように。


こうしてあたしは、時を過ごす。


夜になるまでずっと。


かたわらに、大樹の存在を感じながら。



感じるの。大樹の柔らかな髪を。


触れ合う肩の温もりを。


規則正しい、大樹の吐息を。



変わらない。なにも変わらない。


だからここは、あたしたちの永遠の庭だ。


ね、大樹。


あたしは目を閉じて、心の底から満ち足りていた・・・・・・。