朝食を済ませ、学校に行く用意をして、玄関を出る。
「玄関のカギ、OK。よし、行こうか大樹」
あたしは自転車に乗り、学校へ向かった。
通学時間は、ほんの十五分。
歩いても三十分もしないで着ける距離の高校に、あたしは進学した。
大樹との思い出の場所から、できるだけ離れずに時間を過ごしたかったから。
学校に到着して、指定の自転車置き場に向かう。
自転車にカギをかけていると、向かいの学食から声をかけられた。
学食じゃなくて、みんなは『カフェテリア』って呼んでるけどね。
白い割烹着に、三角巾を頭に巻いたおばちゃん達が、カツ丼を作る『カフェテリア』です・・・。
「おう、佳那」
「あ、祐輔。おはよう」
右手に牛乳。左手にサンドイッチ。
祐輔が大きなテラス窓に寄りかかり、こっちを見ている。
そう。祐輔も同じ高校に進学した。
お蔭で受験シーズン中は、親や先生とけっこうモメて大変だったんだ。
だって祐輔の頭だったら、県下でナンバーワンの高校だっていけるのに。
だから当然、親友としてあたしもそっちの方を勧めたんだけど。
『祐輔、あっちの高校狙いなよ。祐輔なら余裕で合格だよ?』
『だれが行くかよ。進学校なんざトリ肌立つぜ』
『でも・・・・・・』
『オレはもう決めたんだ。なに言ってもムダだ』


