大樹の席は、当然ながら空席。
その空間は、やっぱり寂しく見えてしまう。
でもあたしはいつも通りに席に着いた。
いつも通りに友達とおしゃべりする。
そしていつも通りに元気にケラケラ笑った。
いつも通りにチャイムが鳴り、担任の先生が教室に入ってくる。
でも・・・・・・
先生の様子が、いつもと違っていた。
先生は泣き腫らした、真っ赤な目をしていた。
クラスのみんなが、その異様な状況にとまどう。
「・・・・・・起立。礼」
日直が、口ごもりながら号令をかける。
みんなが不安な気持ちを抱えて立ち上がり、頭を下げ、座った。
ガタガタと、イスの脚を引きずる騒々しい音。
その音がすっかり静まって、教室内がシンと静かになる。
それでも先生は視線を下に向けたまま、何も言いださない。
クラスの誰も、何も言わない。
いつもおしゃべりがウルサくて注意されてる子すらも、無言のまま。
息苦しい緊張感と不安が頂点に達したとき、先生の口が開いた。
「・・・・・・とても残念なお報せがあります・・・・・・」