「ねぇ奥村さん、これ、実はナイショなんだけどね」
急に、お母さんが明るい声を出した。
あたしはボロボロの泣き顔を上げて、お母さんを見る。
「大樹ったらね、付き合ってた子がいたらしいのよ」
「・・・・・・・・・・・・!」
あたしは、涙に濡れた目を見開いた。
「相手が誰かは、分からないんだけどね」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも絶対、彼女がいたのは間違いないわ。あの子ったら生意気にも、秘密の恋人なんか作っちゃって」
お母さんは、あたしの心中を知らずにうふふっ、と嬉しそうに微笑んでいた。
「大樹、とっても幸せそうだったの。本当にすごく嬉しそうだった」
「・・・・・・・・・・・・」
「できることなら、その女の子にお礼を言いたいくらいよ」
頬を赤らめ、本当に嬉しそうな笑顔で、お母さんは夢中で話す。
「だって、恋よ! 恋! 恋なんて素晴らしいものを、あの子は感じることができたのよ!」


