お母さんはホウッと目を丸くして、笑顔になった。
「大樹と同い年の子が、どんどん成長していくのを見るのは嬉しいわ」
「・・・・・・・・・・・・」
その言葉に、あたしの心はまた暗くなってしまった。
明るくしようって思ったばかりなのに。
でもお母さん、きっと無理してる。
そう思うと、かわいそうで・・・。
だって自分の息子はもう死んでしまったのに。
周りの子たちは、命を謳歌しているのを見るのが、嬉しいなんて。
そんなわけないよ。
あたしは・・・ズルイって妬んだもの。
どうして大樹だけ? って恨んだもの。
あの桜の木を見上げながら、心の底から。
だから・・・・・・。
「あたし、ズルイと思います」
あたしは初めて、お母さんの目をまともに見た。
「こんなの、ひどいと思います」
だから、本音が口に出た。
そしていろんな思いを込めて、繰り返した。
「ひどいです。大樹が可哀想です。ひどい」


