大樹が逝ってしまったことを知った、あの時。
爛漫と桜が咲いていた。
自分の命を、これ見よがしに、ひけらかす様に。
その咲き誇る美しさが、憎かった。
それを目の当たりにすることが、苦しかった。
あの時の桜は、今でもこの目に焼き付いている。
網膜に傷付くように。
「奥村さんは、いま高校二年生よね?」
あたしのキツイ口調に、何かを感じ取ったんだろう。
お母さんが、そんな風にさり気なく話題をそらした。
・・・いけない。変に思われたろうな。
こんなんじゃダメだ。
明るい会話を心がけなきゃ。
「はい。高二です」
「もうそんなになるのよねぇ。大樹の同級生は」
感心するような、しみじみとした声。
「祐輔ちゃんも、あんなに大きくなっちゃって」
「あれは特別です。バスケ部だし、人の五倍くらい食べるし」
「そんなに!? 男の子ってすごいわね」


