「先に行ってる」
祐輔の背中がそう言って、教材室から出て行く。
その姿を目で追いながら、あたしは一歩も動けなかった。
廊下を歩く祐輔の足音が聞こえる。
暗がりの中、その音に耳を澄ませていた。
遠ざかる足音が、完全に聞こえなくなって、そして・・・・・・。
あたしは、ズルズルとその場に座り込んでしまった。
力尽きたように、体にまったく力が入らない。
顔がジンジンと火照っている。
痛いくらいの動悸も、まだ止まらない。
この苦しい動悸の理由は、なんだろう?
緊張? 恐れ? 辛さ? 悲しさ?
それとも・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・。
言おう。
祐輔にハッキリと。
『祐輔の気持ちは、あたしには受け入れられない』
そう言うんだ。一刻も早く。
もう言わなきゃならない時が来てる。言うべきだ。
たとえそれが原因で、祐輔と決別することになっても。
あたしは、言わなければならないんだ。
決意したあたしは、なんとかヨロヨロ立ち上がり教材室を出た。


