「佳那・・・・・・」
吐息のような祐輔の声が、あたしの名を呼ぶ。
そのあまりに切ない声色に、あたしの心臓は破裂しそうになった。
祐輔の腕が、あたしの体を閉じ込める。
固い指が愛しげに、あたしの肩と腕を優しく撫でた。
祐輔の匂いに包まれ、体が固まってしまって動けない。
振りほどけない。
指先すら、動かせない。
人形のように、黙って、されるがままに祐輔に包み込まれていた。
カアッと顔に血が集まる。
あまりに一気に血が集まったせいで、顔中の皮膚がヂリヂリと痛んだ。
ゴクリとツバを飲み込み、渇いた唇を必死に動かす。
「ゆ・・・すけ・・・・・・」
声は情けないほどに、かすれていた。
「ゆ、すけ・・・・・・戻、ろう」
「嫌だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「戻って来るなって言われたろ?」
「ゆ・・・・・・」
「このまま、ここに・・・いや、違う」
祐輔が、あたしの髪に顔をうずめた。
「このままふたりで・・・どこかへ行ってしまおう」
髪に触れる唇。熱い息。
あたしの体を閉じ込める腕の力が強まる。
「佳那・・・・・・」
吐き出す息と共に、髪に何度もキスをされた。
身に覚えのあるその感覚に、あたしはピクンと震える。
この感覚は・・・・・・
あの日、中庭で何度も感じた・・・・・・。


