そんなある日。
日本史の授業中に、急に先生が慌て始めた。
「あー、しまった教材忘れた! 今日の日直は?」
「はい。私ですけど」
手をあげるあたしに、先生が済まなそうに両手を合わせる。
「奥村、すまん! 教材室へ行って取って来てくれ。場所分かるな?」
「はい。分かりました」
立ち上がったあたしに、クラスの男子が声をかける。
「奥村、ゆーっくり取って来い。そんで授業時間潰せー」
「なんなら、そのまま戻って来なくてもいいからなー」
笑い声が湧き上がる。
あたしも笑いながら教室を出て、リクエスト通りにゆっくりと歩いた。
各教室から、先生の解説の声や、朗読の声が聞こえる。
教材室は校舎のだいぶ端の方。
近づくごとに、それらの声が逆に遠ざかっていった。
教材室に着いて、扉を開け、中に入る。
ちょっと薄暗いけど、この程度なら電気点けなくても大丈夫ね。
扉を開けていれば、十分に見える。
奥の方に進み、キョロキョロと頼まれた教材を探した。
えーっとえーっと、近代日本の・・・・・・
あった!
げ、あんな高い所にある。


