教科書を胸に押し付け、必死に動悸を抑えようとした。
落ち着け。静まれ。静まれ・・・・・・。
でも、なかなか心臓は言うことを聞いてくれない。
そんなあたしを、由依は何も言わずに見ている。
そして、チラッと視線を後ろに向けた。
祐輔が後ろにいる。
そしてあたしを見ている。
その視線を痛いほど背中に感じる。
あたしは思い知った。
祐輔は元通りになろうなんて思っていない。
そんなこと、ちっとも考えていないんだ。
どうしよう。
普通に過ごしていれば大丈夫だと思っていたけど。
こんなの全然、普通じゃないよ。
祐輔は変わろうとしている。
変えようとしているんだ。
あたしの動悸は静まる気配がない。
祐輔の視線も、あたしに向けられたまま。
あたしは、心の中で大樹を呼んでいた。
大樹。大樹。どうしよう、大樹。
お願い答えて。大樹。
でも答えは聞こえてこなかった。
あたしの心には、責めるような赤い光だけ。
大樹の指輪の光だけが、トゲのように突き刺さっていた。