思わず顔を上げる。


見えるのは、前を向く祐輔のキレイな横顔。


頭から大きな手が離れていく。


祐輔の温かい指が、離れ際に、あたしの頬に触れた。


髪と、耳と、頬をかすめる。

祐輔の体温が。


ドキン! と激しく心臓が鳴った。


ドッドッと連続して、鼓動が鳴り響く。


あたしは祐輔の大きな背中を見つめた。


手は、もう離れたのに。


髪には指の感触が、そして頬には熱が残ってる。


祐輔の・・・・・・


指先の感覚・・・・・・。



その時、あたしの記憶がよみがえった。


大樹と寄り添い合った記憶。


あの時、お互いに重ねた指の温もりを。


『佳那・・・・・・好きだよ』


・・・・・・・・・・・・。


記憶の中の大樹の声に、あたしの心が掻き乱される。


さっきとは比較にならないほど、大きな罪悪感を感じた。


あたしは祐輔の背中から目をそらし、両目をギュッと目を閉じる。


フルフルと頭を振って、祐輔の指の感触をはらい落とした。


そして、体温を忘れようとした。


忘れるために、制服の上から指輪を強く握りしめて・・・・・・。