もう。


もう、分かんないよ。


嘘だったの?



『ありがとう、うらら』


『またきみに会えて嬉しいよ』



私に向けられた笑顔も。



『今日、寄り道して帰ろう?』

『うらら、どうしたの?』


『怪我はない?』



私にくれた優しさも。



『何があっても私はうららの味方よ』

『うららは本当に優しいわね』


『信じるよ、うららを』

『僕はうららのことが大好きだからね』



言葉も、全部。



全部、嘘だったの?



涙が次に零れ落ちる。



あぁ、


壊れていく。


割れていく。



パリン。



パリン。



ガラスの食器を落としたみたいに。


2人との出来事を思い出す度に


思い出が、心が、


色あせていく。


歪んでいく。


黒く塗りつぶされていく。


何もかも、全て。



もう何も見えない。


何も分からない。


何も信じられない。



いつも味方でいてくれると思っていた、誰よりも信頼していた、誰よりも大好きだった2人に裏切られて、これから私は何を信じたらいいの。



声を殺して泣きながら走る私の腕をつかんだのは、


「吉崎君...」


吉崎君だった。


吉崎君は黙ったまま、強い力で私の腕を掴んでいる。


「は、離してよ!」


腕を自分の方に引き寄せて、吉崎君の手を振り払おうとしても離れない。


吉崎君は静かに、けれど強い瞳でずっと私を見ていた。