『でも、亜美は噂を流すのも頑張ったよね』


『そうね。わざわざ吉崎君と一緒に喫茶店に行った甲斐があったわ』


『4人で出かけて、パレードの人混みに紛れてうららと吉崎君を2人きりにして、2人が付き合ってるんじゃないか、とか、浮気してるんじゃないか、とか噂を流す。

そんなこと、普通の人は思いつかないよ。

それに、僕と亜美がもともと付き合っていて、うららが亜美から僕を奪ったなんてことまで噂に流すなんてね。

まさに悪魔みたいだね』


『あら、どの口が言うの?

侑也だって最初から私と組んで嘘をついていたくせに』


それに、と亜美は付け加えた。


『私と侑也は元々付き合っていることは本当のことじゃない』


亜美はつやっぽい声で言った。


『そうだね』


侑也は相槌をうった。


もういっそのこと耳を塞ぎたかった。


何も聞きたくなかった。



『それに僕達は永遠の愛を誓った仲だからね』



けれど両手で耳を塞ぐよりも先に、響いた声が耳に届いてしまう。


『本当は私、侑也とうららが付き合ってることにするの、嫌だったのよ?見ていられなかったわ。
侑也は私のものなのに』


『はは、君が嫉妬しているのは伝わってきていたよ。言葉の端々からね。
だけど、それすらも可愛かったよ』


侑也はいつも私に言っていたような口調で言った。


『僕は亜美しか見ていなかったんだよ。

僕は亜美だけを愛しているからね。

今までも、これからも、ずっとね』


『私もよ、侑也』



私はその場から逃げ出すようにして引き返した。


もうこれ以上は耐えきれなかった。