どこへ行けば2人に会えるだろう。

2人はどこにいるだろう。

やっぱりクラスだろうか。


そんなことを考えながら階段を下りて、人通りの少ない音楽室前を通過する。

すると音楽室の隣にある美術室の正面にある階段から声が聞こえた。


今のこの位置、音楽室の前からは階段の様子は見えないけれど、声だけはよく響いて聞こえる

私はゆっくり近づきながら声を聴いた。


『…は本当にすごいね』


声はお風呂場のようによく響く。

男の子の声だった。

どこかで聞いたことがあるような、優しい声。

また別の声が聞こえた。


『私を誰だと思っているの』


私は口元を抑えて目を見開いた。

私はこの声を、この2つの声をよく知っている。


ううん、よく知っているなんてものじゃない。


『さすがだよ、亜美』


『侑也もね』


侑也と亜美だ。


心臓がどくんと跳ねて、冷汗が流れる。

2人にばれないようにそっと顔を見ると、間違いなく侑也と亜美だった。


顔を確認するとすぐに元の場所に戻って私がここにいるとバレないように息をひそめた。


『きみの演技力には度肝を抜かされるよ。

まさかあんなに仲の良いフリや嘘泣きができるなんてね。

思わず本当に仲が良いのかと思ってしまったよ』


『あれくらいの演技、私からしたら朝飯前よ』


仲のいいフリ?

嘘泣き?


演技?


何、それ。


意味の分からない言葉が次々に出てきて、うまく脳内で繋がらない。


『ははっ。これをうららが聞いていたら泣き出すだろうなあ』


侑也は面白そうに笑った。


自分の名前が出てきて、心臓がどくんと大きくなった。

心拍数は加速する。


『私だけを悪者にするのはやめてくれない?

大体、侑也だってそうじゃない。

うららに一目ぼれしたようなフリをして、甘ーい言葉で告白して付き合ってるんですもの。

それにバカップルみたいなフリまでしてね』


亜美は楽しそうに笑った。


『僕にしては頑張っただろう?』


侑也も笑っている。


楽しそうな笑い声が響く中、私は口元を抑えて目を見開いた。