「おはよう、うらら」


「侑也...」


侑也は眉を少しだけ下げて微笑んでいた。

侑也の隣のサボリ魔はというと、今日も今日とてサボっているようだ。


「今朝は大変だったね。大丈夫だった?」


言葉が、刺さる。


「侑也...」


包み込むような優しさが。


陽だまりのような暖かさが。


どうしようもなく、私に突き刺さる。


「侑也、あのね、私...」


伝えようとしたところで、学級委員の声が響いた。


「着席ー」


私は何も言えないまま、着席した。


侑也の方を振り返ると、侑也は目を細めて微笑んでいた。


どうして、侑也はそんなに優しい微笑みを私にくれるのだろう。


涙が出そうなほど暖かいその笑顔は、罪悪感となり私を責め続けた。








「...なるほどね」



休み時間になると、女の子達からの尋問が始まると分かっていた私は、チャイムが鳴ると侑也の腕を掴み、教室を抜け出した。


事のあらすじを説明すると、侑也はいつもと変わらない様子で微笑んだ。


「納得、してくれるの?」


恐る恐る尋ねると、侑也は逆に私に問いかけた。


「僕が、うららを疑うと思った?」


何も言えないでいると、更に侑也が言った。


「僕はうららの彼氏だよ。彼氏が彼女を信じないで、一体誰を信じるの」


侑也は私の頬を両手で包むと、顔を近づけた。

おでこがぶつかる。


「信じるよ、うららを。僕はうららのことが大好きだからね」


少し掠れた声が、耳に届く。

甘くて、優しくて、心地いい、大好きな声。


「侑也...」


ただでさえ近かった顔が更に近づいて。


人通りのない、二人きりの廊下。


そっと唇が重なった。