「それに、今回はただの噂話じゃないわ。

侑也も吉崎君も、かっこいいってみんなが言っていて、女子達の注目を集める2人よ。

そんな2人に関する恋愛の噂がすぐに収まるわけないわ」


「た、確かに…」


「まぁ、でも、安心して」


亜美は言った。


「"人の噂も七十五日"っていうでしょう?しばらくすれば収まるわよ」


そっか、そうだよね。


そう一瞬納得しかけたが、すぐに気づいた。


「七十五日って、2ヶ月ちょっとだよね!?じゃあ後2ヶ月近くこの噂に悩まなくちゃいけないの!?」


がっくり、私はうなだれた。

2ヶ月なんて、遠すぎる。


「まあまあ、2ヶ月も時間が過ぎるのを待たなくても、そのうちその噂が嘘だって、みんなも気づいてくれるわよ」


ね、と手を握られた。

侑也や吉崎君とは違う、柔らかい手。


「それに、何があっても私はうららの味方よ」

「亜美…!」


亜美が私の親友でいてくれて良かった、と心の底から思った。


気が付くとクラスの扉が目の前にあった。


思わず立ちすくんでしまう。


ごくり、唾を飲む。


「うらら、心の準備はいいかしら?」


亜美の声掛けに、頷いた。


がらり、扉があくと同時に、女の子達に囲まれ、教室内へと連行された。


「ちょ、ちょっと待って!待ってってば!」


私の声など聞こえない様子で、尋問が始まる。


「昨日の凱旋パレードでうららと吉崎君が手を繋いでたって噂もあるんだけど、本当?」


あんなに人がいたんだ、クラスメイトがいないとは限らない。


それに、私と吉崎君は一緒にいた。

確かに、手を繋いでいた。


「いや、あの、本当だけど、それにはですね、ふかーい、ふかーい理由がありましてですね!」


「本当って、どういうこと!?」


「うららは寅木君と付き合ってるんでしょ!?」


「うらら、浮気してるってこと?」


「二股だったの?」


「どういうこと!?」



「いや、それはですね!」


説明しようとしたところで担任の先生が入ってきた。



「朝礼を始める。学級委員ー」

「きりーつ」


朝礼が始まり、私はようやく解放された。


へとへとになりながら、自席へ向かう。