「いや、私が付き合ってるのは侑也だから!」


「分かってるわよ、そんなこと」


亜美は溜息を吐いた。


「とりあえずクラスに戻るわよ。朝礼が始まるわ」


時計を見ると、あと5分で朝礼が始まる時間だった。


「戻りながら説明するわね」


亜美がそう言うので、私も仕方なくクラスに戻ることにした。


「ねえ、なんでそんな噂が流れてるの?」


「分からないわよ。というか、私にも説明してほしいわ」


亜美は目を細めながら私に聞いた。


「うらら、あなた二股かけてたの?」


「んなわけないでしょーが!」


なんであんなに素敵で、大好きな彼氏がいるのに二股なんてかけなければならないんだ。


それに、相手が吉崎くんなんて、それはない。


ありえない!


「まぁ、そうよね。うららが二股なんて器用なことできるわけないと思っていたわよ」


亜美は少し微笑んでくれた。


「亜美…!そうだよ!その通りなんだよ!亜美は信じてくれるんだね、私のこと!」


「当たり前でしょう?私を誰だと思っているの」


亜美がふふっと笑った。


「持つべきものは親友だねぇ~!」


信じてくれる人がいて良かった。


亜美に抱き着くと「重い」と一刀両断され、ベリリとはがされた。


そこでふと思い当ることがあった。


「私と侑也が付き合ってるってこと、みんな知ってるよね?」


私と侑也の関係は2人だけの秘密にはしておらず、クラスの公認になっている。


というか、すぐにばれてしまった。


私は隠し事をするのが本当に苦手らしい。


「だからこそ、この騒ぎよ」


亜美は溜息を吐いた。


「うららと侑也は付き合っているのに、昨日の凱旋パレードで吉崎君と手を繋いで歩いてたってどういうこと?ってね」


絶句した。


「待って、それって、私が浮気してるって思われているってこと!?」


亜美は頷いた。


「大変なことになったわね」


私は亜美に縋り付いた。


「どーしよ、どーしよう、亜美さん!助けてー!」


「いやっ、服を引っ張らないでよ、うらら!助けたい気持ちはちゃんとあるけれど、噂は一回広がるとなかなか収集がつかないわよ?」


亜美は諭すように言った。