吉崎君と侑也の顔を交互に見ていた亜美はパン、と両手を合わせて「そうだ」と言った。

3人とも亜美を見た。


「ど、どうしたの?亜美?」


私が尋ねると、亜美は、ふふふ、と笑った。


「いいこと思いついた」


こういう時に亜美が使う"いいこと"というのは絶対にいいことではない。

むしろ逆だ。最悪でしかない。


「吉崎君、今日の放課後は暇かしら?」


「...まぁ」


亜美はその答えを聞いて、ふふ、と笑った。楽しそうな笑顔だ。


「あ、亜美さん...?」


しかし私はこの亜美の笑顔が恐怖で仕方がない。

何を言い出すのかと固唾を飲んで見守る私をよそに、亜美は楽しそうな笑顔で言った。


「放課後、4人でお茶しに行きましょう?」


ああ、もう、なんて無茶苦茶なことを言うんだ。

あまりの衝撃に私は言葉が出なかった。


吉崎君はというと、少し目を見開いて固まっていた。

どうやら亜美の言葉を処理するのに時間がかかっているらしい。

亜美は唐突にとんでもないことを言うので、吉崎君がこうなるのも無理はない。


吉崎君と私が驚き固まる中で、ただ一人、彼だけはいつもと変わらない反応をした。


「いいね、それ」


侑也は笑顔で賛成した。


「うららも吉崎君も賛成だよね?じゃあ決定だね」


眩しいばかりの笑顔をこちらに向ける。


「え!?」


「おい、寅木!俺は行くなんて一言も言ってねぇ!」


反論する私と吉崎君の肩に、侑也はポンと手を置いて微笑んだ。

何だか親に諭されている子供のような心地がする。

というか何なの、この強行突破っぷりは!


驚く私と吉崎君と穏やかに微笑む侑也を見ながら、亜美は終始楽しそうにニコニコ笑っていた。





放課後になり、向かったのは学校近くの喫茶店。

4人掛けの席に着く。

私の隣に亜美、亜美の向かいには侑也。

そして私の前に吉崎君が座った。


注文をし終えると会話もなくなり、重い沈黙が訪れた。