「この3日間が、とても長かったよ。早く、早く会いたかった。辛かったよ、うららに会えなかったから」


侑也の瞳はとても悲しそうで、切なそうで。


「侑也…」


愛されていると、そう感じた。


「あー、うざい」


隣から亜美の低い声が聞こえた。


「朝から何イチャついてるの?うざいったらないわ。

周りへの迷惑を考えなさいよ、このバカップル。

特に侑也。貴方、かなりうざいことを言っていると自覚はあるの?」


亜美は激怒していた。それは半分呆れているようでもあった。


「うざったく感じるかもしれないけど、でも、この気持ちを抑えられないんだよ」


「あぁ、そう。無自覚でイチャついているのね。迷惑でしかないわ」


侑也は困ったような笑顔を浮かべながら、亜美に謝っていた。


その時、後ろでガタンという音がした。

振り返ると、吉崎君がいた。


「あら、吉崎君、おはよう」


亜美が笑顔に戻って挨拶をした。


「おはよう」


侑也も相変わらずの穏やかなスマイルだ。


しかし吉崎君は口をへの字にして眉をひそめてちらりと2人の方を見ると、「おはよう」とため息交じりに挨拶をした。


朝からこんなに不機嫌だなんて一日がつまらないだろうなと率直に思う。


「お、おはよう」


私が挨拶すると、吉崎君は、おう、とも、ああ、とも聞き取れるような曖昧な声を発した。


挨拶ですらないってどういうこと!と怒りたいところだが、無視されなかっただけ良かったと思った方が良いかもしれないと思いなおした。


「今日は来たんだね、吉崎君」


侑也が穏やかな口調と笑顔でそう言ったが、吉崎君は聞き流した。


「無視は酷いよー」と侑也が笑った。


「別に、あんたには関係ないことだろ」


吉崎君は面倒くさそうに答えた。


「そんなこともないよ?」


侑也は言った。


「僕たちはクラスメイトなんだから」


侑也の言葉に吉崎君は何も言わなかった。


何も言わずに、頬杖をついて窓の外に広がる空の青を見上げていた。