授業が終わった後、せめてもの抵抗にと私も吉崎君をキッと睨んだ。


すると彼は言った。


「何?」


とても不機嫌そうな顔をしている。


ごうっと怒りが燃え上がるのを感じた。


『何?』、だって!?


それはこっちのセリフだっつーの!







「もうほんと何なのよ、あいつー!」


放課後、私は溜まりに溜まった吉崎君に対する不満を亜美に聞いてもらっていた。


「まぁまぁ、うらら。落ち着いて」


「だって!」


「まぁ、気持ちは分からなくもないけど...」


亜美は苦笑いをして言った。


「でも、吉崎君じゃなくても、右手と右足が同時に出るなんて状態をクラスで引き起こすなんて、馬鹿というかアホというか、マヌケだと思うわよ」


「亜美さん、何を言ってくれるんだろうと思ったら、フォローでも慰めでもないんだね!それどころか逆に傷口にタバスコ塗ってるよ、それ!」


「あら、私はタバスコなんて持っていないわよ?」


「そんなこと分かってるよ!ただのたとえ話だよ!本当に傷口にタバスコかけてたらドSの中のドSだよ!?そんなことになったら私の亜美の印象ががらりと変わっちゃうよ!?
ていうか、なんでこんなところでボケてくるの!?」


全力でツッコミをして少し息が切れる。


亜美は普段クールで大人っぽくて、皆からも便りにされているのに、時々よく分からないタイミングでボケてくるから、それだけが少し困ったところだ。


「うらら、元気だしなさいよ。いつも笑っているのがあなたでしょう?」


亜美は、あ、そうだ、と何かを思い付いたように言った。


「今日、寄り道して帰ろう?ほら、最近学校の近くにできたパン屋さん」


メロンパンがおいしいって有名なの、と微笑まれた。


「そこって確か、イートインコーナーもあるんだっけ?」


「そうよ。そこでお茶して帰りましょう?ほら、テストもまだ先なんだし」


にっこり微笑む亜美が女神に見える。


「亜美ー!」


亜美にぎゅーっと抱きついた。


「亜美、大好きー!」


「私もよ、うらら」


二人で笑いあって、パン屋さんに向かった。