ホームルームが終わると、おはよう、と近くの席の女の子、梨花(りか)ちゃんと唯(ゆい)ちゃんから挨拶されて、私も笑顔でおはようと挨拶する。


「今日はうららだけじゃなくて亜美ちゃんもギリギリだったね」


珍しいこともあるんだね、と梨花ちゃんに言われた亜美は少し不機嫌になった。


「うららが学校に来たらそのまま購買に行くって聞かなかったのよ。朝の購買は人が多いっていうのに」


ジト、と横目で見られて、う、と詰まる。


「だ、だって、メロンパン人気だからすぐ売り切れちゃうんだもん!」


ふーん、と亜美に軽くあしらわれた。

亜美、ひどい。


「うららって、本当にメロンパンが好きだよね~」


「だって美味しいじゃん!」


力説すると、今度は梨花ちゃんに軽くあしらわれた。

り、梨花ちゃんまで…!


ショックを受けている私を気遣ってか、「メロンパン、買えたの?」と私に問うてくれた唯ちゃん。優しいったら、ない。

私は誇らしい気持ちで戦利品と呼ぶべきメロンパンを取り出した。


「買えたよ!」


ほら、と見せると、良かったね、と唯ちゃんも梨花ちゃんも言ってくれたので私は笑顔で頷いた。


「うららっていつも本当に明るいよね」


「不思議とうららの笑顔を見ると1日頑張れちゃうよね」


私以外の3人が頷き合っていた。


「不思議なことと言えば、さっき唯ちゃんとも話してたけど"あれ"もそうだよね」


人差し指を立てて、梨花ちゃんが言った。


「"あれ"?」


私が首を傾げていると、梨花ちゃんが声をひそめて言った。


「ほら、あのサボリ魔のことだよ」


「サボり魔って、吉崎(よしざき)君のこと?」


ほら、と言って人差し指で示した方角を見ると、それは窓際の列の一番最後。


そこに確かに吉崎君がいた。


相変わらずの仏頂面で、肘をついて窓の外を眺めている。

・・・って。


「えぇーっ!?」

「シーッ!うらら、うるさい!」


梨花ちゃんに言われて慌てて口元を抑える。