「じゃあ」


侑也は顔を上げて私を見た。


見つめられた瞳は優しくて、魅力的で。


このまま見つめていたら、もう侑也から離れられなくなると思った。


でもこの目から視線を逸らすことはできなかった。


吸いこまれるように、侑也を見ていた。




「僕と、付き合ってくれないかな」




今度こそ、完全に思考回路はショートした。



「初めてうららに会ったとき、うららのことを、可愛いひとだなって思った。

でも、それからずっとうららのことが頭から離れなかったんだ。

今日もう一度きみと再会して、いろんなきみを知って。

もっともっときみを知りたいって思ったんだ。

誰よりも近くで。


可笑しいよね、昨日会ったばかりなのに」



なだれ込む言葉が、愛おしくて、暖かくて。


こぼれ落ちてしまわないように、抱き締めるように、一つ一つ胸に刻み付けるように聞いた。



「それで僕は思ったんだ。


僕はうららが好きだって」



思いが溢れて、涙に変わる。


溢れる涙を拭いながら、一言も聞き漏らさないように耳を傾けた。



「僕達が一緒に過ごしたときはまだほんの僅かしかないけれど。

でも、そんなこと関係ない。

これから一緒に思い出を増やしていこう」



侑也は私の手を大事そうにとった。



「僕と、付き合ってくれますか?」



私は言葉で伝えようとした。


けれど気持ちが喉でつっかえて、うまく言葉に変換できなかった。


私は必死で伝えようと頷いた。


何度も何度も、頷いた。


一つ呼吸をしてから、もう一度侑也の顔を見ながら言った。



「私も侑也のことが好き。

初めて会ったときからずっと、好き。


だから、よろしくお願いします」



侑也は今まで見たことがないくらい優しいかおをして、とった右手を握り直すと引き寄せた。


とん、と侑也にぶつかったかと思ったら、ぎゅっと抱きしめられた。


苦しいくらい、強く。


侑也の胸に顔を埋めると、侑也の匂いがした。


なんだか落ち着くと感じた。


「うらら」


少し掠れた声で名前を呼ばれ、顔をあげると、侑也の顔が迫ってきた。


「目を閉じて」


やさしい声色で囁かれるように言われたら、もう、逆らえなくて。


私はゆっくり目を閉じた。



「うらら、好きだよ」



柔らかい感触を唇に感じた。