「でも、仲良くなりたいな。

隣の席になったんだ、これもきっと何かの縁だと思うんだ」


あのサボリ魔のことを話しながら、こんなにも優しいかおをする侑也と仲良くできないひとなんていないと思った。


仲良くなれないのは血も涙もない鬼のような人物に違いない。


「侑也ならきっと仲良くできるよ」


吉崎君の性格は知らないけど、きっtp侑也なら上手に付き合えるだろう。


「ありがとう」


侑也はにっこりと笑った。




...あぁ、ほら、また。


侑也の笑顔を見る度に、侑也に溺れていく。


好き。


その感情が深くなっていくの。


侑也、あなたは気づいていないだろうけど。


初めて会ったその瞬間からずっと、あなたが好きなんだ。



「あっ、ごめんなさい!」


亜美が突然立ち上がった。


「ど、どうしたの?」


慌てる亜美に私は尋ねた。


「今日、バイトがあったんだけど、すっかり忘れてた!」


「バイトは何時からなの?」


侑也は変わらない穏やかな口調だった。


「あと30分くらいで始まるの。

ごめんなさい、ちょっと抜けてもいいかしら?」


「僕は全然構わないよ」


「私も大丈夫だよ。

それより急いで。でも、安全にね。

怪我なんてしないようにね」


本当にごめんなさい、と亜美は言い残して部屋を出ていった。


バタン、と大きな音と共に、扉が閉まった。


取り残された、私達。


2人きりの空間に沈黙が流れる。


気まずい。


一体何を話せばいいのだろうか。


必死に話題を探していると、意外にも侑也がこの沈黙を破った。


「あのさ、うらら。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「えっ?うん、何?」


予想さえしていなかった。


侑也から質問されるなんて。



「うららって、誰かと付き合ってるの?」



しかも内容が、こんなことだなんて。



「へっ!?」



ちょっと待って、頭が追い付かない。


侑也は何を聞いてるの?



「付き合ってる人、いるの?」



うつむき加減で、声色は少し強張っていて。


どうしてだろう、と考えるより先に、私は答えていた。


「いっいないよ!誰とも付き合ってないよ!」


私の答えを聞いた侑也は「そっか」と息を漏らすように言った。