突発性ヴァンパイア・ガール!

「ふうん、吉崎君はほんとに甘いんだね。

それが優しさだというべきか、僕には分からないけれど」


吉崎君の苦しみの原因は、私にも理解できる。

吸血鬼は倒さなければならない存在。

しかしそれは、友達である侑也と亜美。

その2つの間で葛藤が生まれて、摩擦が起きて、心が痛んでいる。


その苦しそうな表情を見て、胸が締め付けられた。


私には何の力もないけれど、どうしたら吉崎君を救えるかな。


私がしばらく考え込んでいると、侑也が言った。


「どっちでもいいけれど、吉崎君は僕らを倒す気はないんでしょう?

それなら、僕達がきみを倒すよ。

これ以上、僕の仲間を倒されるのを黙って見ているわけにはいかないからね」


そして両手を広げた。


影はぐわりと歪み、先端の鋭い矢のようにして吉崎君の真上から落ちてくる。


あまりにも突然のことに吉崎君も反応が遅れた。


このままじゃ、吉崎君が対抗するよりも先に、影が吉崎君を貫いてしまう。


「やめて!」


そのことに気づいた瞬間、私は叫び、影に向かって鏡を向けた。


光が反射して、影は徐々に消えていく。


侑也はゆっくりと私の方を見た。


「うらら、邪魔しないでくれる?」


声は穏やかで、口調も優しかった。


けれどそこからは冷たさと残酷さしか感じ取れなかった。


「やめて、侑也」


私は手を広げて、吉崎君の前に立った。


「何してるんだ、離れとけっつっただろうが」


吉崎君は怒った様子で私にそう言った。


「嫌だ」

「嫌だって、あんたな」


吉崎君は溜息を吐いた。


吉崎君の前に出たはいいものの、実のところ、対抗策など何も思いついていなかった。


ただ、吉崎君を助けなきゃと思った。


いつも吉崎君が助けてくれた。


だから今度は、私が吉崎君を助ける番だと、そう思った。


「離れとけって。怪我するかもしれねぇんだぞ?」

「別にいい!」

「いや、良くないだろ!」

「何を言われても、どかないから!」

「あんたなあ」


吉崎君は頭を抱えた。


「それじゃ、俺の格好がつかねぇだろ」

「そんなの知らないっつーの!」


大体、と私は吉崎君に言った。


「最初に言ったでしょ?

私は元の人間に戻るために戦うって」


初めて自分の病気を知った時、私は吉崎君にそう言った。


その時の気持ちを、言葉を、私は忘れていない。