突発性ヴァンパイア・ガール!

侑也が、倒された?

侑也が、消えてしまうの?


フラッシュバックする記憶。


倒された吸血鬼は、灰になって消えてしまう。


侑也も消えてしまうの?


侑也の体からは血が溢れ、制服が赤い血の色に染まっていく。


嫌だと思った。


消えないで、そう願ってしまった。


私の好きなひとは今はもう侑也ではないし、嘘を吐かれ、裏切られた。


だけど、それでも、消えてほしくない。


目を細めて侑也を見つめた。


しかし侑也は倒れなかった。


そして立ち上がると、振り返って吉崎君に笑いかけた。


「きみは甘いね」


侑也は撃ち抜かれた場所に手を当てた。


「僕が飲むコーヒーよりよっぽど甘いよ」


手を離すと、その手のひらにあったのは発砲されたはずの弾丸だった。


「どうしてシルバーブレッドを使わないの?

僕らの弱点の1つはシルバーブレッド。

それを使えば僕らは1発で消滅する。

だけど普通の弾ならば、僕らはすぐに怪我を治癒してしまう。

ハンターであるきみなら分かっているはずだ」


私は吉崎君を見上げた。

吉崎君は辛そうな表情をしていた。


「吉崎君…?」


すると吉崎君はようやく口を開いた。


「あぁ、分かってる。

シルバーブレッドでなければ、あんたを倒せないとな。

それは脳に染みついてる」


「それなら、どうして」


侑也の言葉を遮るように、吉崎君は拳銃を持っているのとは反対の手で胸を抑えた。


「ちゃんとシルバーブレッドは持ってる。

ここにちゃんとある。

それなのに、使えない。

使えないんだよ」


吉崎君はすごく苦しそうで、辛そうだった。


「吸血鬼は憎い。憎くてたまらない。

俺はダンピール。

親父は吸血鬼で、母が人間だ。

母は親父を見る度に叫んだ。

誰か助けて、もう来ないで、消えて。

母親のおびえた顔を忘れられない。

そしてついに母親は心に病気を患った。

それからずっと親父が、吸血鬼が、憎くてたまらなかった。

だからハンターになった。

もうこれ以上、母親のように吸血鬼に苦しめられる人間を出さないために」


吉崎君は胸を抑えていた手の力を強めた。


まるで服の上からシルバーブレッドの拳銃を掴むように。


「今目の前に憎くてたまらない吸血鬼がいる。

シルバーブレッドを使えば簡単に倒せる。

そしてシルバーブレッドはここにある。


頭では分かってるのに、使えない。


シルバーブレッドに触れる度に、手が避けるんだよ…!」