突発性ヴァンパイア・ガール!

「ちょ、ちょっと待ってよ!」


私は思わず声をかけ、3人の間に割って入る。


吉崎君の顔を見た。


それは見たことのある表情だった。


吸血鬼と対峙するときの、冷たい顔。


「吉崎君、本気なの?

本当に2人を倒すつもりなの?」


私が問うと、吉崎君は「何を聞いているんだ?」と言った。


「俺はハンター、吸血鬼を狩るのが仕事だ」


「だからって!」


亜美と侑也を倒すなんて。

友達だと思っていた2人を、倒すなんて。

そんなことができると、本当に言うの?


「吸血鬼は悪だ。人間に害を与える存在。

今までだってあんたは何度も危害を加えられようとした。

何度も吸血鬼に血を吸われそうになった。

そうだろう?」


それは分かってる。

分かってるけど。


何度も何度も思い出すんだ。


2人の笑顔、くれた優しさ、言葉。


その暖かさと心地よさ。


けれど同時に噴き出すように思い出される、嫌な記憶。


裏切られた。

嘘をつかれた。

ありもしない噂を流された。


悲しみとやるせなさが心を満たす中、差し込んできた優しい思い出たちに、心は押しつぶされてしまいそうだった。


「今回だってそうだ。

あんたは裏切られた。嘘をつかれた。

散々な目にあわされただろう。

それなのにあんたはどうして俺を止めようとする?

今までは止めなかったのに」


「それは…」


はっきりしない私の答えを遮って吉崎君は言った。


「あんたは下がっとけ。

戦いに巻き込まれないように。

もしもの時は、あんたに渡した銃を使え」


吉崎君は強い口調で言った。


「俺は俺のやるべきことをする」


吉崎君は再び2人の方を見た。


3人の間にピリピリと緊張感に満ちた空気が流れる。


おそらく、一触即発だろう。


私はジリジリと後ずさり、3人から距離をとった。


サワサワと木の葉が風に揺れる。


それと同時に木漏れ日がゆらゆら揺れる。


周囲からは音が消え、ただ風だけが吹き渡っていた。


風に揺られ、1枚の木の葉が舞った。



ひらひら

  ひらひら。



軽やかに、緩やかに。


まるで空中で踊るように落ちてきた。


その葉は徐々に高度を落とし、やがて地面に舞い降りた。



丁度その時、パン、と乾いた音が響いた。


木にとまっていた鳥は驚いて声をあげ、バサバサと慌てた様子で飛び去った。