兄の言葉に凛花は気持ちが軽くなった思いだった。

高性能小型爆弾を自分が作ってしまったという説はなくなったからだ。

自分の作ったものは、間違いなく安全装置だった。


しかし・・・安全装置から小型爆弾に進化させることに気がついた人物がいたというのは驚いた。


「満原大樹の経営している満原機械製作所って会社に潜んでいた。」


「大樹さんって私の通っている学校の理事長もしてる人だよ!
それ、本人も知ってたってこと?」


「いいや。彼は知らなかった・・・。
無理もない・・・彼は親父さんからたくさん背負わされただけだったんだから。

化学者っていうのは便利なものができる、新しいものができるかも・・・って思うと作りたくなるよな。

犯人もおまえの作った安全装置を手に入れなければ、何もなかったわけだが・・・手に入れてしまったんだ。
それで、犯人はひらめいてしまった・・・。
そこまでいえばわかるだろう?」


「いけないものだとわかっていながら、どんどん研究開発してしまったのね。」


「ああ。それで、大樹さんは警察から事情聴取を受けている。」


「大樹さんも罪になるの?」


「いや、たぶんならないと思う。
でも経営者だからな・・・なんらかの責任はとることになるだろうな。

たぶん、智樹ももう好き勝手な人生はおくれない。」


「どういうこと?」


「智樹はね、満原家の血は半分しか受け継いでいないんだ。
あいつは、お母さんの連れ子だからね。」


「えっ!!それで・・・僕だけ蚊帳の外・・・だったわけね。」



「きいたのか?でも蚊帳の外だったってわけじゃない。
それは彼のお母さんが、彼を守りたかったからそうしたんだ。

満原の名前のものをすべて継いでしまうってことは、とても苦しいことなんだ。
これは大樹さんからきいたんだ。

自分では何もわからないことばかりなのに、知るために勉強させられていくんだって。」


「え・・・そうだったんだ。」


「俺のアメリカでのバックアップも、じつは大樹さんが手伝ってくれたんだ。
化学者のよくないウワサをお父さんが現役のときからきいていたらしくて、俺に仕事を一任してくれながら、バックアップとして必要経費から、食料、水、通信すべて大樹さんが動いてくれた。

だから、途中から智樹にもうっかり何もいえなくなってメールをしなくなったんだ。
あいつにも悪かったと思ってるよ。」


「智樹さんは話せばわかってくれるわ。
行くところがない私に住むところを提供してくれるばかりか、家事も学校での生活の仕方も教えてくれたもの。」


「そっか。凛花が日本に来たって知って心配だったんだが、智樹が自分の邸に住まわせたってメールをくれてよかったって思ったんだ。
だけど・・・凛花おまえさ・・・きれいになったな。」